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入浴の注意事項 | ||||||||||||||
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温泉入浴は、「温泉の効能」の項で紹介しましたような根拠があります。 一方、そこでは触れられてない特徴として、入浴により一時的に体力を奪い疲労させることにより、自然治癒力がはたらき、体調を整えるということも考えられます。 体に良いことをすると、「好転反応」「めいげん反応」と呼ばれる一時的な体調不良を自覚することがあります。 「湯あたり」もその一種で、湯治2〜3日目(または1週間程度)にあらわれやすく、だるい、頭が重い、寒気、めまい等の症状がこれにあたります。 ただし、必ずしも「好転反応」とは限らず、温泉が体質に合わないことによる場合もありますので、注意が必要です。 硫黄泉、放射能泉、酸性泉などが比較的湯あたりを起こしやすいとされます。 ビタミンCの多い野菜や果物は湯あたりの予防になります。 また、長期滞在の当時の場合は、初日は温泉に体を慣らす程度の入浴にした方が湯あたりしにくいです。 なお、湯あたりは1週間以内にあらわれることを考えますと、理想的には、2〜3週間程度の湯治をしたいものです。 温泉の泉質が体質に合わず体調を崩したのと「好転反応」は見分けにくいので、体調を崩したら、一時入浴を中止し、復調したらまた入浴しましょう。 湯治は、2〜3週間続けておこないたいものですが、必ずしも毎日入浴するのでなく、治癒の過程で体に痛みがでたり、「湯あたり」をしたら、入浴しない休息日をとりましょう。 1週間の湯治では、こんな方法もあります。 1日目:1回の入浴 2日目:2回の入浴 3日目:3回の入浴 4日目:休息(不調部分に痛みがでてくるので入浴しない) 5日目:3回の入浴 6日目:2回の入浴 7日目:1回の入浴 そして、昔から、「湯治は、七日一回り、三回りを要す」と言われています。 つまり、上記の入浴を3回おこない、3週間湯治するのがよいとされているのです。
湯船につかる前に「かけ湯」をするのは、体の汚れを落としてから入浴するというマナーでもありますが、急激な温度変化による血圧の急上昇の防止など重要なプロセスです。 つま先、腿、腹部、指先、腕、胸と体の末端から心臓近くへと向かっていきましょう。 頭に10〜20杯のかけ湯をすると立ちくらみ防止になります。 急激な温度変化をなくすために、脱衣場をあたためるのも大変有効です。22℃以上を目安にしましょう。
入浴するときも、上がるときも、ゆっくりと! 入浴時は、水圧・温度・温泉の刺激へ負担を軽くするために、足浴→半身浴→全身浴の順でゆっくり入浴しましょう。 お風呂から上がる時は、水圧から開放され、体の表面やより下半身側に血液が移動するので、脳貧血を起こしやすいのです。 そこで、入浴する際の逆で、全身浴→半身浴→足浴→ゆっくり立ち上がるという流れをつくりましょう!
万能に見える湯治であっても、入浴する人の状態によっては、十分な注意が必要です。 泉温42℃の温泉が、もっとも気持ちよいと言われていますが、高齢、心臓病、脳梗塞、高血圧などの条件にあてはまる人には注意が必要です。 65歳以上の死亡原因は、交通事故より入浴における変異(心筋梗塞、脳梗塞など)の方が高いというデータもありますので、注意しましょう。 高齢の方、病気をお持ちの方は、できるだけ2人以上でご入浴ください。 また、体に負担をかけにくい「半身浴」「分割浴」を心がけてください。
前記の各項目からもお分かりのように、湯治が目的であるならば、入浴直後の運動、宴会は避け、入浴直後は、十分に休養を取るべきです。 それができるのが、温泉旅館の良さです。 温泉療法は、温泉成分の薬理効果のみならず、一時的な疲労をつくることで、蘇生力により健康体を作るという面も持っています。 この性格は、筋肉トレーニングとも似ていて、筋トレによる筋肉破壊が、筋肉を強化して蘇生させ、この際休養が必要なことに共通しています。 それだけ、温泉入浴には休養が大切なことなのです。 なお、入浴後、血圧が安定するまでには2〜3時間はかかりますので、少なくとも30分間は、横になってゆっくり休むことをお勧めします。 また、後述の通りスポーツ直後、また、旅疲れの時の入浴も好ましくないので、入浴前、入浴後には30分〜1時間の休息をとる習慣をつけたほうがよいでしょう。
酸性泉(特に強酸性)など特に肌への刺激が強い泉質を除いては、体についた温泉は洗い流さず、タオルで軽く拭く程度にします。 一番良いのは、温泉が出ている「湯口」より桶で新鮮な温泉を汲み、そこにタオルをつけておき、適温になったらそのお湯をで「あがり湯」をし、タオルを絞って体を拭くというものです。 バスタオルは使わないほうがよく、湯冷めしないためにも、脱衣場でなく風呂場で体を拭いてからあがるようにしましょう。 温泉の薬効成分は、3時間程度は効果が持続します。
入浴後は、発汗作用により、水分、特にミネラルが不足します。 また、これにより血液の粘度が高まり、「ドロドロ血」の状態になりやすいです。 そこで、入浴前後は、ミネラルウォーター、麦茶など水分を十分補給してください。 特に高齢者には、水分の補給は必須です。 入浴前後に必ずコップ1杯の水を飲むという習慣をつけたいものです。 「入浴前にも飲む」、大量でなく「コップ1杯ずつ」というのがポイントです。 失われた汗に含まれるナトリウム、カリウムなどが配合されたスポーツドリンクも効果的です。 また、熱により、ビタミンCが損なわれるので、これも併せて補給したいものです。オレンジジュースは理想的なドリンクの一つです。 補給する水分の温度としては、体に負担をかけないぬるめの水がよいのですが、スポーツ選手の水分補給は、10〜15℃が腸への到達速度が速いことが知られているので、体調に応じ腹が痛くならない程度に冷やすのもよいでしょう。 アルコールや甘いジュースはかえって喉を渇かすので、温泉療養にあたっては避けたいものです。 ただし、温泉旅行では、入浴直後が食事時間であったり、宴会時間であるというような場合が多いです。 入浴後は、特に熱い湯での入浴後は胃腸の動きが鈍っていますので、そんな意味での入浴後のビールはおすすめです。 何より、入浴後のビールはおいしいですからね。 そんな意味での食前酒、乾杯酒は理にかなっています。 また、短い滞在期間でのリフレッシュを目的とした旅行では、適度のアルコールがストレス解消させるのは言うまでもありません。 宴会で日常生活を忘れ、とことん飲むのも精神衛生上はよいことでしょう。 ただし、飲酒による事故には十分お気をつけください。
健康増進に役立つ温泉入浴も、体力を消耗するものですから、1日3回までを目安にしたほうがよいでしょう。 また、入浴法も、半身浴、分割浴など長湯しても体に負担をかけにくい方法をとり、熱い湯の長湯などは避けた方がよいでしょう。 とにかく体に負担をかけずに温泉の効能を得る入浴法が大切です。 上記、「湯あたり」の項の1週間の湯治の入浴回数も参考にしてください。
入浴すると疲れるのが、「入浴疲労」です。 この入浴疲労があらわれているメッセージが「汗」です。 汗が出る状態は入浴疲労が起きている状態と思ってください。 体に負担をかけずに「温熱効果」や温泉の場合の「薬理効果」を得ようとするなら、額が軽く汗ばむ程度にとどめるようにしましょう。 一方、入浴の効能に、スポーツ等をしなくとも楽をして汗をかき、老廃物を排泄できるというものがあります。 発汗を目的とするのであれば、「入浴前後の水分補給」「十分なかけ湯」「半身浴」「分割浴」などを組み合わせながら、安全な入浴法を心がけましょう。 【発汗の効果】【水分補給・かけ湯】【半身浴】【分割浴】 詳しくは、こちらをご覧ください→【泉温別入浴法】
入浴も飲酒もともに血行を良くする効果があります。 そこで、血液は大量に皮膚表面に移動して脳の血流が減少し、貧血を起こしやすくなります。 また、心拍数増加により不整脈が起こりやすくなるとともに、心臓発作に結びつくこともあるのです。 酔っている時は、単純に事故の危険性もあります。
二日酔いのときは、血中アルコール濃度が高い状態です。 入浴による発汗でアルコールが抜けるような錯覚を起こしますが、実際には血液の粘度が更に高まり、また、アルコールを分解する肝臓の水分不足で具合が悪くなることすらあります。 入浴するのであれば、十分水分を摂り、目を覚ますという意味での入浴にとどめ、長湯しないことです。 「二日酔い入浴法」を参考になさってください。
食後は、消化のために胃や腸に血液が集まりますが、その際に入浴すると、体の隅々の血管にまで血液がゆきわたり、胃腸への血液が不足し、消化、吸収の働きは低下します。 また、水圧により食物が移動しにくくもなります。 むしろ食前の入浴が望ましいのですが、どうしても食後に入浴する場合は、30分から1時間の休息をとりましょう。 また、高温の湯は交感神経を刺激して胃腸の動きを弱めるので、副交感神経を刺激して胃腸の働きを活発にするぬるめの湯を利用した方がよいです。 どうしても食事後に入浴しなければいけない場合は、「半身浴」をしましょう。
スポーツ直後の入浴は爽快です。 しかし、実際にはスポーツ前後は最低30分あけて入浴したほうがよいです。 スポーツで筋肉を動かすと、乳酸などの老廃物(疲労物質)を運び去るために筋肉の血流が増加します。 スポーツ前後の入浴は、全身に血をめぐらせるため、筋肉に十分な血液が巡らなくなるのです。 特に高温の湯は、血管を収縮させるので、老廃物を取り除くのに十分な血流を得ることが更に難しくなります。 宿の熱い温泉では、十分なかけ湯をして、徐々に温泉を体になじませましょう。 なお、スポーツでの疲れを癒すには、「冷温交互浴」が効果的です。
風邪をひいて発熱している時は、原則として入浴はひかえます。 特にウィルス性のものは、入浴で体温が高まることにより活性化しやすくなります。 ただし、風邪のひきはじめで、多少寒気を感じる程度の時は、ぬるめの湯にゆったりつかってあたたまるのもよいでしょう。 入浴後は、湯冷めしないうちに、早めに布団に入り、ゆっくり休みましょう。 熱が下がり、風邪の症状が治まったら、むしろ体をあたためたり、肌を清潔にしたりすることは大切なことなので、湯冷めしないように慎重に入浴することは差し支えないでしょう。 |